前回の記事でも書きましたように,令和2年4月1日より,約120年ぶりに債権法が大きく改正されます。(前回の記事はこちら)
本日は「賃貸借契約」に関する民法改正について一部ご紹介したいと思います。
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賃貸物の修繕に関する規定が見直されます!
賃貸物に修繕が必要になった場合(備付けのエアコンが故障している,屋根が損傷して天井から雨漏りがしている等),これまでは賃貸人が賃貸物の修繕義務を負う規定がありました(民法606条)。しかし,賃借人が賃貸人の負担する必要費を支出した場合に請求ができる規定はあったものの(民法608条),具体的にどのような場合に賃借人が自分で修繕できるのかを定めたものはありませんでした。
そこで改正民法では,
①賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知した場合,又は賃貸人がその旨を知ったのに,賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき
②急迫の事情があるとき
のどちらかの場合には,賃借人が賃貸物を修繕することができるようになります(改正民法607条の2)。
これにより,上記①②の場合には,賃借人が賃貸物を修繕したとしても,賃貸人から責任を追及されることはないことが明確になりました。
賃借人の原状回復義務及び収去義務の明確化されます!
賃貸借契約が終了した場合,賃貸物を元の状態に戻して賃貸人に返還しなければなりません。そしてどこまでの範囲をもって元の状態に戻したか(原状回復)となった場合,通常損耗(通常の使用によって生じた損耗)や経年変化はこれまでその対象に含まれていないとはされておりましたが,明確なルールはありませんでした。そこで改正民法では,賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷のうち,通常損耗や経年変化については原状回復義務を負わない(改正民法621条)ことを明記しました。
敷金に関するルールが明確化されます!
建物等の賃貸借にあたっては,敷金等を渡すことが一般的ですが,それにもかかわらずこれまでの民法には敷金の定義や敷金返還請求権の発生時期についての規定はありませんでした。そこで,改正民法では,これまでの実務に従い,「いかなる名目によるかを問わず,賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で,賃借人が賃貸人に交付する金銭」と定義づけられました(改正民法622条)。
また,これまでの判例に従い,賃貸借契約が終了して賃貸物が返還された時点で敷金返還債務が発生すること,その額は受領した敷金の額からそれまでに生じた金銭債務の額を控除した残額であること,賃借人は,賃貸人に対し,敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができないこと,が明記されました(改正民法622条)。
なお,令和2年4月1日以前に締結された賃貸借契約については,改正前のルールが適用されますが,それ以降賃貸借契約を合意更新する場合は,改正されたルールが適用されますのでご注意ください!
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