家族信託はやめたほうがいい?後悔しやすいケースと失敗を防ぐ方法

皆さんが家族信託について調べていると、

「家族信託はやめたほうがいい」

「家族信託は危険」

「契約して後悔した」

といった記事や口コミを目にすることがあるかもしれません。

親御様の認知症対策を考え始めた方にとっては、

「本当に家族信託を利用して大丈夫なのだろうか」

「あとで後悔しないだろうか」

と不安になるのも無理はありません。

結論から申し上げると、家族信託は決して「やめたほうがよい制度」ではありません。

家族信託は、認知症による資産凍結を防ぎ、親御様の財産を適切に管理するための有効な制度です。(家族信託については、こちらの記事をご覧ください。)

一方で、ご家庭の状況に合わないまま契約したり、契約内容を十分に検討しなかったりすると、「思っていたことができなかった」「別の制度を選んだ方が良かった」と後悔する可能性があります。

すなわち、問題なのは家族信託という制度そのものではなく、制度の特徴を十分に理解しないまま契約してしまうことです。

この記事では、家族信託が「やめたほうがいい」と言われる理由や、実際に後悔しやすいケース、失敗しないためのポイントについて、司法書士の視点から分かりやすく解説します。

 

このページの目次

家族信託はやめたほうがいいと言われる理由

インターネットで「家族信託」と検索すると、「やめたほうがいい」「危険」「失敗した」といった言葉が表示されることがあります。

こうした言葉だけを見ると、家族信託そのものに問題があるように感じるかもしれません。

しかし、実際には制度そのものが悪いのではなく、「制度の特徴を十分に理解しないまま契約したこと」が後悔につながるケースが少なくありません。

以下では、一般に家族信託はやめた方がいいと言われる理由について解説していきます。

家族信託は万能な制度ではないから

家族信託は、認知症対策や財産管理に非常に有効な制度です。

しかし、介護施設への入所契約や医療に関する同意など、本人の生活に関するすべての法律行為を行える制度ではありません。

また、信託契約の対象としていない財産については、受託者が管理することはできません。

そのため、「家族信託さえ契約しておけば安心」と考えてしまうと、期待とのギャップから「思っていたことができない」と感じることがあります。

契約内容によってできることが変わるから

家族信託には、全国共通の契約書はありません。

例えば、

・実家を将来売却できるようにしたい

・賃貸アパートの管理を子どもへ引き継ぎたい

・親御様の生活費や介護費用を管理したい

など、ご家庭によって目的は異なります。

そのため、一件ごとに契約内容を設計する必要があります。

契約書に必要な権限が定められていなければ、「契約したのに希望していたことができない」という結果になる可能性があります。

家族信託以外の制度が適している場合もあるから

認知症対策だからといって、必ず家族信託を利用しなければならないわけではありません。

例えば、

・亡くなった後の財産の分け方だけ決めたいのであれば遺言書

・生活面の支援まで考えるのであれば任意後見契約

・すでに判断能力が低下しているのであれば成年後見制度

など、別の制度が適している場合もあります。

大切なのは、「家族信託を利用すること」ではなく、「ご家庭の課題を解決できる制度を選ぶこと」です。

 

家族信託で後悔しやすい7つのケース

家族信託を利用して後悔するケースには、いくつか共通点があります。

制度そのものが原因というよりも、契約前の準備不足や制度への理解不足が原因となっていることがほとんどです。

以下では、家族信託で後悔しやすいケースをご紹介いたします。

① とりあえず家族信託を契約してしまった

「認知症対策には家族信託が良いらしい」と聞き、目的を整理しないまま契約してしまうケースがあります。

例えば、

「何のために家族信託をするのか」

「どの財産を管理したいのか」

が曖昧なままでは、将来必要な権限が不足してしまう可能性があります。

家族信託は、ご家庭の課題を解決するための仕組みです。

契約すること自体が目的ではありません。

② 受託者を安易に決めてしまった

財産を預かる受託者には、信託財産を長期間にわたって管理する責任があります。

「長男だから」「近くに住んでいるから」という理由だけで決めるのではなく、

・責任感があるか

・継続して管理できるか

・他の家族との関係は良好か

なども考慮して選ぶことが重要です。

③ 家族への説明をしなかった

法律上、家族全員の同意が必要となるわけではありません。

しかし、兄弟姉妹へ十分な説明をしないまま契約すると、

「勝手に財産を管理している」

という誤解を招き、家族間のトラブルへ発展することがあります。

可能な限り、ご家族全員で目的を共有しておくことが望ましいでしょう。

④ 将来の売却を想定していなかった

実家を将来売却する可能性があるにもかかわらず、売却権限について十分に検討しないまま契約してしまうケースがあります。

家族信託は、「契約して終わり」の制度ではありません。

将来起こり得る出来事を想定しながら契約内容を設計することが重要です。

⑤ 信託する財産を十分に検討しなかった

家族信託では、契約した財産だけが信託財産となります。

例えば、自宅だけを信託し、預貯金を信託しなかった場合には、介護費用の支払いに必要な預貯金を思うように管理できないことがあります。

一方で、すべての財産を信託すればよいというものでもありません。

ご家庭の状況に応じて、「どの財産を、何のために信託するのか」を整理することが大切です。

⑥ 税金まで安くなると思っていた

「家族信託を利用すれば相続税も安くなる」と考えている方がいらっしゃいます。

しかし、家族信託は、基本的に財産を管理・承継しやすくするための仕組みです。

契約しただけで相続税や所得税が大幅に軽減される制度ではありません。

もちろん、信託の内容やその後の財産承継の方法によって税務上の検討が必要になるケースはありますが、「節税制度」と考えて契約すると、期待とのギャップから後悔につながることがあります。

税金については、司法書士だけでなく、必要に応じて税理士とも連携しながら検討することが大切です。

⑦ 専門家選びを十分に検討しなかった

家族信託は、ご家庭ごとに契約内容が大きく異なります。

そのため、契約書を作成するだけでは十分とはいえません。

例えば、

・将来、実家を売却する可能性はあるか

・賃貸アパートを誰が管理するのか

・受託者が亡くなった場合はどうするのか

・信託終了後は誰が財産を引き継ぐのか

など、将来まで見据えた設計が必要です。

費用だけで専門家を選んでしまうと、「契約したけれど希望どおりに運用できない」という結果になることがあります。

家族信託では、契約書を作成する技術だけでなく、ご家庭の将来を見据えて提案できる専門家へ相談することが重要です。

 

家族信託が向いていない家庭とは?

家族信託は、多くのご家庭で認知症対策として有効な制度ですが、すべてのご家庭に適しているわけではありません。

次のような場合には、他の制度を検討した方がよいこともあります。

すでに親御様の判断能力が低下している場合

家族信託は、本人が契約内容を理解し、自らの意思で契約できることが前提です。

そのため、認知症が進行し、契約内容を理解することが難しい状態では、新たに家族信託契約を締結することはできません。

このような場合には、成年後見制度の利用を検討することになります。

家族間で信頼関係が築けていない場合

家族信託では、財産を預かる受託者へ財産管理を任せます。

そのため、

・兄弟姉妹の仲が悪い

・財産を巡る対立がある

・一人だけへ管理を任せることに強い反対がある

という状況では、契約後に大きなトラブルへ発展する可能性があります。

契約前には、可能な限り家族で話し合い、「何のために家族信託を利用するのか」という目的を共有しておくことが望ましいでしょう。

財産管理を行う必要がほとんどない場合

親御様の財産が少額の預貯金や年金収入のみで、生前の財産管理に大きな課題がない場合には、家族信託が最適な方法とは限りません。

例えば、

「亡くなった後の財産の分け方だけ決めたい」

ということであれば、公正証書遺言だけで十分なケースもあります。

制度を利用することが目的ではなく、ご家庭の課題を解決することが目的であることを忘れてはいけません。

 

家族信託で失敗しないための5つのポイント

家族信託は、契約前の準備によって、その後の使いやすさが大きく変わります。

後悔しないためには、次の5つのポイントを意識しましょう。

① 家族信託を利用する目的を明確にする

「認知症対策だから家族信託をする」のではなく、

・実家を将来売却したい

・アパート経営を引き継ぎたい

・親御様の生活費や介護費用を管理したい

など、具体的な目的を整理することが重要です。

目的が明確になることで、契約内容も自然と決まってきます。

② 将来起こり得る出来事まで想定する

家族信託は、10年、20年と続くことも珍しくありません。

契約時だけではなく、

・施設へ入所したら

・自宅を売却することになったら

・財産を預けた方が病気や死亡したら

など、将来起こり得る場面まで考えて設計することが大切です。

③ 家族で十分に話し合う

契約後のトラブルを防ぐためにも、契約前に家族全員で目的を共有しておくことをおすすめします。

法律上必要でなくても、ご家族の理解を得ておくことが、円滑な財産管理につながります。

④ 家族信託だけで解決しようと考えない

家族信託だけで、すべての認知症対策が完結するわけではありません。

例えば、

・亡くなった後の財産承継は遺言書

・生活面の支援は任意後見契約

など、それぞれの制度を組み合わせることで、より安心できる仕組みを作ることができます。

⑤ 家族信託の実績がある専門家へ相談する

家族信託は、不動産、相続、成年後見、税務など、多くの知識が関係します。

価格だけではなく、

・家族信託の実績

・契約後のサポート

・他制度も含めた提案ができるか

という点も確認しながら専門家を選ぶことが大切です。

 

家族信託以外の制度を選んだ方がよいケース

家族信託が最適なご家庭もあれば、他の制度の方が適しているご家庭もあります。

例えば、

・相続対策だけであれば遺言書

・生活面の支援まで考えるなら任意後見契約

・すでに判断能力が低下している場合は成年後見制度

など、ご家庭の状況によって選択肢は異なります。

大切なのは、「家族信託ありき」で考えるのではなく、ご家庭の状況に応じて制度を選ぶことです。

 

家族信託を検討する際によくある質問

家族信託の利用には、色々なことを検討しなければなりません。

以下では、お客様からいただくよくある質問をご紹介いたします。

家族信託と任意後見契約とはどちらが優れていますか?

一概にどちらが優れているかは、ご家族によって異なります。

特にそれぞれできることと役割が違うので、どのような対策を求めているのかによって判断すべきです。

家族信託は危険な制度ですか?

いいえ。家族信託そのものが危険な制度というわけではありません。

制度の特徴を理解し、ご家庭に合った契約内容を設計することで、認知症対策として非常に有効な制度になります。

家族信託は自分で契約できますか?

法律上、自分で契約することは可能です。

しかし、契約内容によって将来できること・できないことが大きく変わるため、専門家へ相談しながら進めることを強くおすすめします。

家族信託を始めるタイミングはいつですか?

親御様が契約内容を理解できるうちに始めることが重要です。

認知症が進行してからでは契約できない可能性がありますので、「まだ元気だから」と先延ばしにせず、早めに検討することをおすすめします。

 

まとめ|家族信託は「やめたほうがいい」のではなく、ご家庭に合った設計が大切です

「家族信託はやめたほうがいい」という意見を見ると、不安になる方も多いでしょう。

しかし、実際には制度そのものに問題があるのではなく、目的が曖昧だったり、ご家庭に合わない契約をしてしまったりしたことが、後悔につながる大きな原因です。

一方で、親御様が元気なうちに適切な契約を結ぶことができれば、認知症になった後も、自宅やアパート、預貯金などの財産を円滑に管理できる可能性があります。

家族信託は非常に有効な制度ですが、すべてのご家庭に必要なわけではありません。

遺言書だけで十分なご家庭もあれば、任意後見契約や成年後見制度を組み合わせた方がよいご家庭もあります。

大切なのは、「家族信託を利用すること」ではなく、「ご家庭にとって最適な方法を選ぶこと」です。

司法書士法人あかつき総合法務事務所では、家族信託だけを前提とするのではなく、ご家族の状況や財産内容、ご希望を丁寧にお伺いしたうえで、遺言書・任意後見契約・成年後見制度なども含め、最適な生前対策をご提案しております。

「うちの場合は家族信託が向いているのだろうか」

「親が元気なうちに、何から始めればよいのだろうか」

そのようなお悩みをお持ちの方は、どうぞお気軽に司法書士法人あかつき総合法務事務所までご相談ください。

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