「自分たちには子供がいないけど、相続はどうしたらいいの…?」
「相続人は夫しかいないけど、遺言書を書いておいた方がいいの…?」
「子供のいない場合も含めて、相続手続きについて相談したい…!」
このようにお悩みの方はいらっしゃいませんか?
子供がいない場合、相続人は一方の配偶者と両親、両親が既に亡くなっている場合には、亡くなった方の兄弟姉妹(兄弟姉妹も亡くなっている場合には甥姪)になります。(法律で定められた相続人については、こちらの記事をご覧ください。)
「…うちは夫しかいないから大丈夫…!」
そのように思っていても、実際に相続手続きを行うためには、他の相続人と協力して行わなければならず、仮に協力を得られない場合には家庭裁判所へ遺産分割の調停・審判手続きを進めていかなければなりません。
ですから、子供がいない夫婦の場合には、生前から一方に相続させるための対策を講じる必要があります。
以下では、子供のいないご夫婦の相続に関する問題点と生前できる対策について解説していきます。
このページの目次
ご夫婦に子供のいない場合の相続手続きに関する問題点
子供がいないご夫婦に相続が発生した場合、以下のような問題点があります。
① 夫婦だけでは相続手続きができない
ご夫婦の一方に相続が発生した場合、亡くなった方の両親または兄弟姉妹(兄弟が亡くなっている場合、甥姪)も相続人になります。金融機関の口座解約や有価証券の移管手続などの際には各金融機関等で提出を求められる相続届出書に相続人全員の署名捺印が必要になるため、ご夫婦だけでは手続きができません。
② 両親・兄弟姉妹との遺産分割協議が必要
ご夫婦の一方に相続が発生し、相続人で財産を分けるためには、相続人全員で遺産分割協議を行わなければなりません。亡くなった方の両親または兄弟姉妹と仲がいい場合は問題ありませんが、まったく会ったことがない相続人や疎遠な相続人との協議はうまくいかないことが多いため、相続手続きが困難になる場合があります。(会ったことがない相続人がいる場合の相続手続きについては、こちらの記事をご覧ください。)
③ 相続人がいなくなる場合がある
ご夫婦に子供がおらず、亡くなった方に相続人がいない場合には、法律で定められた相続人がいなくなる可能性があります。相続人がいなくなった場合、亡くなった方の相続財産は国庫に帰属しますが、帰属させるまでには相続財産管理人の選任が必要となります。相続財産管理人の選任のためには、管轄家庭裁判所への申立書等の提出や予納金の納付も必要になりますので、子供のいないご夫婦が亡くなり、相続財産管理人の選任が必要となる場合には、申立人には手間とお金がかかることになります。(相続財産管理人の選任については、こちらの記事をご覧ください。)
子供のいない夫婦が残された一方に財産を相続させる方法
子供のいない夫婦が残された一方にスムーズに財産を相続させるためには、遺言書を作成することが必要になります。
① 遺言書が優先される
生前に遺言書を作成しておくと、法律で定められた権利よりも遺言書が優先されるため、亡くなった後両親や兄弟姉妹と手続きをする必要がありません。
② 遺言書の種類
遺言書には大きく分けて、普通方式と特別方式があります。普通方式にはご自身で作成する「自筆証書遺言」と、公証役場を通して作成する「公正証書遺言」と「秘密証書遺言」があります。特別方式には、①死亡の危急に迫った者の遺言②伝染病隔離者の遺言③在船者の遺言④船舶遭難者の遺言がありますが、利用できる場面が極めて限定的であり、これらは日常ほとんど利用されることはないと言っても過言ではありません。その他遺言書の種類については、こちらの記事をご覧ください。
③ 遺言書を作成するときの注意点
遺言書を作成するときには、以下のような注意があります。
ⅰ)夫婦でそれぞれ作成する
遺言書は共同で作成しても無効になるため、遺言書はそれぞれ各1通ずつ作成する必要があります。
ⅱ)予備的遺言の内容にしておく
遺言書を作成した方が亡くなったとき、既に遺言書内に書かれている相続させる方が亡くなっていると、相続財産は法律で定められた相続人に承継されてしまいます。夫婦の一方が遺言書作成者よりも先に亡くなった場合、別途財産を承継させようとする方がいる場合には、別途相続人が遺言者よりも先に亡くなる場合に備えてあらかじめ財産を承継させる方を決めておく予備的遺言の内容とするべきでしょう。
ⅲ)遺言執行者を選任する
亡くなった方が遺した遺言書の内容を実現するためには、原則相続人全員で手続きを行わなければならないため、相続人の中に一人でも非協力的な方がいると、円滑に手続きを進めることができなくなります。そのため遺言書の内容を確実に実現するためには、遺言執行者を予め選任しておく必要があります。(遺言執行者については、こちらの記事をご覧ください。)
遺言の他に子供のいない夫婦が生前にできる相続対策とは
子供のいない夫婦が一方に財産を承継させるためには、遺言書の他にも
① 生前贈与を利用する
② 家族信託を利用する
③ 生命保険を利用する
などがあります。
以下では詳細を解説していきます。
① 生前贈与を利用する
子供のいない夫婦が一方に生前に財産を承継させるためには、生前のうちに贈与をする方法があります。通常財産を無償で贈与する場合には、110万円を超える部分について贈与税がかかります。しかし結婚から20年以上経過した場合に居住用不動産を生前に贈与する場合には、最高2000万円までは贈与税がかからなくなります。(贈与税の配偶者控除に関する国税庁のホームページはこちら)
② 家族信託を利用する
子供のいない夫婦が信頼できる親族にご自身の財産を託し、財産の管理や処分を任せ、亡くなった後の承継方法まで決めることができます。これを家族信託といいます。家族信託は契約の中で柔軟な財産管理方法を決定し、亡くなった後の具体的な承継方法も併せて決めることができるため、承継させたくない相続人ではなく、本人が希望する形で財産の承継を行うことができます。(家族信託については、こちらの記事をご覧ください。)
③ 生命保険を利用する
生命保険は相続財産とは扱われないため、通常の相続手続きを経ることなく受取人に定めた方へ財産を承継させることができます。ただし生命保険もみなし相続財産として相続税の課税対象となるため、注意が必要です。
当事務所へお任せください!
子供のいない夫婦の相続手続きは、相続人との協議がうまくいかず、難航することが多いため、生前のうちからできることをやっておく必要があります。
子供のいない夫婦の相続手続きも含め、相続対策・生前対策をご検討の方は、当事務所までお問い合わせください。
その他の相続手続き・遺産承継手続きについては、こちらの記事をご覧ください。