「今飼っているペットに財産を相続させたいのだけど、どうしたらいいの…?」
「私が亡くなった後、多少の財産を渡して飼っている犬や猫の世話を知り合いに頼みたい…」
「私の死後のペットの世話も含めて、将来の相続について相談したい…!」
このようにお悩みの方はいらっしゃいませんか?
平成22年の内閣府による「動物愛護に関する世論調査結果」によると、60~69歳の36%以上、70歳以上の24%以上の方ががペットを飼っており、中高年の半分以上の方がペットと暮らしているといえます。
近年では核家族化も進み、子どもの居ない夫婦も増え、ペットはこれまで以上に家族同様の存在となっていくことでしょう。
しかしその一方で、ペットは法律上「動産(=モノ)」であり、権利能力を持たないため、現行法上ご自身の財産を将来ペットに相続させることができません。
そこで、ご自身で築いてきた財産をペットに間接的にでも渡すためには、遺言書を作成したり、別途契約書を作成したりして、信頼できる方へ財産を渡すと同時にペットの面倒を頼まなくてはなりません。
以下では、ご自身の財産を飼っているペットに渡す方法について解説していきます。
このページの目次
ペットのために財産を遺す方法とは
前述のとおり、ペットは法律上「モノ」であるため、直接財産を相続させることはできません。
ですから、ご自身の財産は信頼できる方を通して、間接的に遺すほかありません。
ペットへ財産を遺す方法としては、①ペットの面倒を見る代わりに財産を遺す負担付遺贈(=遺言書を作成する)、②ペットの面倒を見る代わりに財産を渡す負担付死因贈与(=契約書を作成する)、③ペットのための民事信託があります。
以下、詳細を解説していきます。
①負担付遺贈(=遺言書を作成する)について
負担付遺贈とは、財産を遺贈(遺言で財産を渡す)する代わりに、遺贈を受ける方に何らかの義務を負担させることをいいます。この場合、ペットの面倒をみることを義務付けさせ、代わりに財産を渡す内容とします。遺言は相手方の意思に関係なく財産を渡すことができますが、相手方はそれを放棄することができるため、負担付遺贈を行うときは、相手方に事前にペットの面倒をみてもらうよう伝えておかなければなりません。なお、遺言書の中では遺言執行者を選任しなければ、相続人の協力がないと遺言の内容を遂行できなくなりますので、注意が必要です。(遺言執行者については、こちらの記事をご覧ください。)
②負担付死因贈与(=契約書を作成する)について
負担付死因贈与とは、財産を贈与する代わりに贈与をする方(贈与者)が贈与を受ける方(受贈者)に何らかの義務を負担させ、贈与者が死亡したときに効力が生じる契約をいいます。負担付遺贈と同様、ペットの面倒をみることを義務付けさせ、代わりに財産を渡す内容としますが、遺贈と違い、負担付死因贈与は贈与者と受贈者との契約であるため、勝手に撤回することはできません。
③ペットのための民事信託
上記負担付遺贈と負担付死因贈与は、財産を渡す方が亡くなってから効力が生じるものですが、これらの方法では生前にしっかりと義務を果たしてくれるかどうか分かりません。そこで生前のうちに財産を相手方に預けることによって、生前のうちから財産を預けた方のために管理する方法があります。この方法を「ペットのための民事信託」といいます。この方法はペットの飼い主を委託者(兼受益者)とし、ペットの面倒をみてくれる方を受託者とし、お互いで信託契約書を締結します。この契約の中でペットの面倒の内容を決定し、ペットの面倒にかかる費用を信託契約のために開設した信託口口座に入金します。契約の中でペットの面倒をみてくれる方へ報酬を支払う内容を明記するほか、ペットの飼い主が亡くなった後も遺されたペットの面倒をみてもらえるよう、契約の中で定めておきます。(その他、民事信託については、こちらの記事をご覧ください。)
ペットのために財産を遺すときの注意点
ペットのために財産を遺すとき、遺言書や契約書作成の中でいくつか注意点があります。
①ペットの面倒を最後までみてくれるのかどうかを定めておくようにすること
負担付遺贈や負担付死因贈与では、ペットの飼い主の期待する義務を遂行してくれるかどうかを確認することができません。ペットの民事信託であれば、契約の中で信託監督人という者を設定することによって、財産を引き受けた方がしっかりと義務を遂行してくれるかどうかを監視することができます。
②預けた財産が十分かどうかをよく検討すること
ペットの年齢や健康状態によって、ペットの面倒を見る期間が変わります。事前に預けた金額や遺贈する金額が少なければ、預けた方・財産を引き受けた方が自己負担でペットの面倒を見なければならなくなります。場合によっては、追加で金銭を信託するか、あるいは遺言書や契約書を作成し直す必要があります。
③制度設計を都度見直す必要があるかどうかをよく検討すること
人もペットもいつ亡くなるかは分かりません。飼い主・ペット・ペットを預かる方の亡くなる順番や健康状態によっては、遺言書や契約書の見直しを都度行う必要があるでしょう。
当事務所へお任せください!
現行法上、飼っているペットに財産を相続させるためには、遺言書を作成するか、契約書を作成するなど、ご自身が生前のうちに対策を講じるしかありません。
それぞれご自身で作成してもよいですが、内容をしっかり検討しなければ効力を十分に発揮できないため、専門家の関与が必須となります。
ペットのための財産承継についてお悩みの方は、当事務所へご相談ください。
その他、相続手続き・遺産承継手続きについては、こちらの記事をご覧ください。