「いつかは親が認知症になるかもしれないけど、まだ元気だし…」
「もし父が認知症になったら、持っているアパートは誰が管理すればいいんだろう…?」
「両親が元気なうちに何か備えた方がいいとは思うけど、何から始めればいいのかわからない…」
そんな不安を、心のどこかで感じていませんか?
認知症は、気づかないうちに少しずつ進行していくことがあります。
きっかけはちょっとした物忘れ。
少し前のことが思い出せない…。
他人との会話がなんとなく噛み合わないことが増えてきた…。
「父もいよいよ年相応のまだらぼけが始まったかしら…でもまだまだ身体は元気みたいだし…」
しかし気づいたときにはすでに…
「預金が窓口で引き出せない」
「アパートの管理を自分でできない」
「空き家になった自宅を売却できない」
など、日常生活の中で大きな壁に直面してはじめて、「あのとき準備しておけばよかった…!」と後悔する方も少なくありません。
いざという時に困らないよう、元気なうちにできる備えをしておくことが、ご家族皆様にとっての安心につながります。
この記事では、司法書士の視点から「認知症になる前にできる、後悔しないための3つの対策」をわかりやすく解説します。
自分らしい人生を守るために。
そして、大切な家族を困らせないために。
“いま”だからこそ、ぜひご家族で考えていただきたいテーマです。
このページの目次
① 財産管理の備え|預金や不動産の凍結を防ぐためには
認知症になると、金融機関の窓口では大きなお金が引き出しづらくなり、不動産の売買契約や賃貸借契約の場面では正常な判断ができなくなり、不動産を利用した資産運用も制限されてしまいます。
すなわち、「財産を実際に所有しているのに自由に使えない」という事態が起こるのです。
こうした事態を避けるためには、元気なうちから財産管理の体制を整えておくことが不可欠です。
口座凍結のリスクとは?
口座凍結とは、認知症の進行によって「本人に正常な判断能力がない」と判断された場合、金融機関が取引の安全を理由に預貯金の出金を停止する措置をいいます。
これにより、たとえご家族であっても、本人名義の口座からお金を引き出すことができなくなってしまいます。
たとえば、
✅ 医療費や介護費を支払えない
✅ 老人ホームの一時金を支払えない
✅ 管理していたアパートの修繕費が支払えない
といった問題が生じ、家族が経済的な負担を強いられるケースも少なくありません。
いざというときに「お金が使えない」という状況は、生活の安心や医療・介護の質に直結する重大なリスクです。
だからこそ、早めの備えが重要です。
不動産の処分制限のリスクとは?
不動産の処分制限とは、認知症の進行によって、不動産を売却あるいは賃貸する意思表示が充分に行うことができず、不動産がいわば「塩漬け」の状態になることを指します。
不動産の売却や賃貸などの法律行為には、本人の「契約内容を理解し判断できる能力(意思能力)」が必要です。
ところが、認知症によって判断能力が低下すると、「本人が売却することを理解していない」と判断され、契約自体が無効とされる可能性があります。
その結果、家族が売却を進めたくても、本人名義のままでは手続きが進まないという事態に陥ってしまいます。
実際に不動産を売却・賃貸できないと、たとえば
✅ 自宅を売って介護施設の入居費に充てるつもりが、売却できない
✅ 空き家となった実家の固定資産税や管理費用だけがかかり続ける
✅ アパートの修繕や賃貸契約の更新手続きが滞る
といった問題が生じ、不動産が本来もつ経済的な価値を十分に発揮されることができず、ご家族全体の財産管理の影響が出てくる可能性があります。
早めに備える財産管理の選択肢3選
上記のようなリスクに備え、財産管理の準備をしておくことで、ご本人もご家族も安心して将来を迎えることができます。
ここでは、司法書士の視点から代表的な3つの方法をご紹介します。
❶ 生前贈与|判断能力があるうちに信頼できる方へ財産を贈与する
生前贈与とは、ご自身が元気なうちに、ご家族や大切な人へ財産を贈与する方法です。
将来、認知症によって判断能力が低下してしまうと、贈与したことが無効とされるおそれがあります。
だからこそ、意思能力がしっかりしているうちに、自らの判断で財産の行先を決めることが重要です。
生前贈与を上手に活用することで、以下のようなメリットが得られます。
✅ 相続開始前に財産を移転することで、相続手続きを円滑にできる
✅ 家族間で「誰に何を渡すか」を明確にし、争族(あらそうぞく)を防止できる
✅ 贈与税の非課税枠や特例(配偶者控除・教育資金の一括贈与など)を活用できる
たとえば、「子どもにマンションを贈与しておき、将来は家賃収入で生活費を補ってもらう」といった使い方や、「空き家になった実家を元気なうちに子へ名義変更し、処分の判断を任せる」など、家族の意向と将来設計に応じた柔軟な対応が可能です。
ただし、生前贈与は相続税・贈与税などの税務知識や、後々のトラブルを避けるための契約書作成なども重要です。
専門家と相談の上で、税務・法務両面からしっかりと設計することが失敗しない贈与のコツといえるでしょう。
❷ 任意後見契約|信頼できる人に将来の判断を託す
任意後見契約とは、元気なうちに信頼できる人(家族など)と契約を結び、将来認知症などで判断能力が低下した際に代理人として動いてもらう制度をいいます。
任意後見契約には、
✅ 判断能力がある今のうちに、将来を託す人を自分で選べる
✅ 契約内容も柔軟に設定可能(預金管理や施設の契約手続など)
✅ 将来、家庭裁判所の監督下で正式に後見が開始されるため安心
という特徴があります。
自分の意思で「誰に」「何を」任せるかを、あらかじめ決めておける制度となります。
❸ 家族信託|柔軟な財産管理・運用を可能にする
家族信託とは、財産を信頼できる家族に託し、その管理や処分を任せる制度をいいます。
認知症になっても、信託契約をもとに本人のために柔軟な財産管理・運用が可能となります。
家族信託には、
✅ 認知症発症後も、不動産の売却や活用がスムーズにできる
✅ 成年後見制度よりも自由度が高く、本人の意向を実現しやすい
✅ 相続対策や障がいのある子への承継にも活用される
という特徴があり、特に不動産オーナーや事業者には、非常に相性のよい制度です。
より詳しく家族信託を知りたい場合には、「家族信託(民事信託)とは」を併せてご覧ください。
これら3つの方法にはそれぞれ特徴や適したタイミングがあります。
ご家族構成や財産状況に応じて、司法書士など専門家に相談しながら、「自分にとって最適な備え」を選ぶことが大切です。
② 意思表示の備え|“自分らしい選択”を残すためには
認知症が進行すると、徐々に自分の「意思」を相手に明確に伝えることが難しくなります。
たとえば──
✅ 誰に自分の財産を渡したいのか
✅ 延命治療を望むのか、どこで最期を迎えたいのか
✅ 誰に自分の財産管理や介護を任せたいのか
こうした「人生の最終段階」における意思決定は、本来他人に勝手に決められるのではなく、できる限り自分自身で決めておきたいものです。
しかし、言葉で伝えるだけでは、記憶に残らなかったり、家族間での認識にズレが生じたりして余計な争いごとを生み出すきっかけとなる可能性があります。
そこで有効なのが、「自分の意思を“カタチ”として残すこと」です。
意思表示の方法には、次のようなものがあります。
公正証書による遺言書作成
遺言書を作成することで、ご自身の意思で、財産の分け方や葬儀の方法、特定の人への感謝の気持ちなどを正式に残すことができます。
特に公正証書遺言であれば、公証人の関与により形式不備や偽造のリスクがなく、家庭裁判所の検認も不要なため、安全かつ確実です。
遺言書作成について詳しく知りたい方は、「遺言書の作成を検討している方へ」をご覧ください。
尊厳死宣言書・事前指示書
延命措置を受けるかどうか等、医療・介護に関する希望を事前に示すことができます。
「延命は望まない」「最期は自宅で」など、判断が難しい局面で家族や医療従事者の負担を軽減する効果があります。
エンディングノート
法的効力はありませんが、気軽に記入できる分、想いを柔軟に残すことができます。
財産の所在、家族へのメッセージ、介護・医療・葬儀の希望、連絡先なども記載可能で、遺された家族にとって心強い「道しるべ」となります。
意思表示を残すことは、「自分らしく生きる」ための備えであり、同時に家族の迷いを減らし、心の負担を軽くすることにもつながります。
“まだ元気だからこそできる”この準備。
大切な想いを言葉にして、「見えるかたち」に残しておきませんか?
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③ 意思疎通の備え|“その時”を慌てずに迎えるために家族同士の話し合いを
どんなに準備をしていても、「家族がその内容を知らなければ意味がない」というのもまた現実です。
たとえば──
✅ 任意後見契約をしていたのに、家族が知らずに任意後見開始が遅れた
✅ エンディングノートや遺言書を書いていたが、どこに保管しているのかわからなかった
✅ 介護や延命について家族間で意見が分かれ、話し合いがこじれてしまった
このような事態を避けるためには、日頃から家族と率直に話し合っておくことが大切です。
話し合いのポイント
✅「元気なうちに」話す
認知症が進んでからでは、本人の意向が確認できなくなってしまいます。
✅ 1回で終わらせず、定期的に会話する
人生の考え方や健康状態によって、希望が変わることもあるからです。
✅ 感情的にならず、落ち着いた環境で話す
家族それぞれの立場や価値観を尊重しながら、少しずつ理解を深めましょう。
想いを共有することで、家族らしい選択ができる
話し合いを通じて、家族の中で「本人の希望」や「家族の考え方」が共有されると、万一のときにも慌てずに、皆が納得のいく選択がしやすくなります。
たとえば──
✅ 「延命治療は望まない」という本人の想いを家族が尊重できた
✅ 「自宅で過ごしたい」という希望をもとに、在宅介護の準備ができた
✅ 「この子に財産を託したい」という意思に沿って、スムーズに相続手続きが進んだ
といったように、本人の「生き方」に寄り添った選択が可能になるのです。
また、こうした対話を重ねておくことは、将来の相続や介護に対する家族間のトラブルを防ぐ“最大の予防策”にもなります。
「話し合い=揉めるきっかけ」と思われがちですが、むしろ“家族の絆を深めるきっかけ”となりうるのです。
いざという時に「何が正しいか」ではなく、「何がその人らしいか」で判断できる。
それが、意思疎通の備えによって生まれる“家族らしい未来”だと、私どもは考えています。
家族との対話は、将来の「不安」を「安心」に変えるための、最も身近で、最も有効な手段です。
そして、「対話そのもの」も大切な終活の一部だと私たちは考えています。
小さな会話の積み重ねが、やがて家族全員の大きな安心へとつながるはずです。
まとめ|“今だからこそ”できる備えがあります
認知症はある日突然やってくるものではありません。
ゆっくりと、そして確実に、私たちの生活に影響を及ぼします。
しかし、“今ならまだできること”がたくさんあります。
✅ 財産の管理や運用の準備
✅ 自分の意思をきちんと伝える手段の確保
✅ 家族と話し合い、将来に向けた共通認識を築くこと
これらの対策を行うことで、「自分らしい生き方」を守ると同時に、ご家族の負担を大きく減らすことができます。
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