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相続人がいない方の財産を引き継ぐ場合には
「夫婦同様の事実婚生活を送っていたのに、どうやっても相続はできないの…?」
「面倒をみてきた知人の遺言書が不備で財産を引き継げないのだけれど、方法はないの…?」
「身寄りのない姪っ子の財産を引き継ぎたい…!」
このようなお悩みをお持ちではありませんか?
相続人がいない場合、亡くなった方が遺言書を遺していれば、遺言書の内容どおりに財産を引き継ぐことができますが、相続人もなく遺言もない場合には、原則国庫に帰属することになります。
ですが、一定の要件を満たせば、生前(もしくは死後)に特別の縁故・関わりがある方については、相続財産管理人を選任後、特別縁故者として財産を引き継ぐことができる可能性があります。(相続財産管理人の選任については、こちらの記事をご覧ください。)
そこで以下では、特別縁故者として財産を引き継ぐための方法について解説していきます。
特別縁故者とは
特別縁故者とは、亡くなった方と生計を同じくしていた者、亡くなった方の療養看護に努めた者、あるいは亡くなった方と特別の縁故があった者をいいます。
特別の縁故があると主張する者は、まず相続財産管理人の選任申立てを行い、相続財産管理人が相続人の捜索・相続財産の債権者への清算を行った後、自らへの財産分与の申立てを改めて行います。(相続財産管理人の選任申立てについては、こちらの記事をご覧ください。)
財産分与の審判の結果、申立人の特別縁故性と分与の相当性が認められると、相続財産の一部または全部が申立人に分与されることになります。
特別縁故者に対する財産分与ができる場合
特別縁故者として財産分与を受けるためには、亡くなった方と申立人との特別縁故性と申立人に対する財産分与することが相当であるという分与の相当性が認められなければなりません。
亡くなった方と特別縁故性があるかどうかについては、亡くなった方と生計を同一にしていたかどうか、亡くなった方の療養看護に努めたかどうか、その他生計同一者・療養看護者に準じる程度に亡くなった方との間に具体的かつ現実的な精神的・物質的に密接な交渉のあった者で、相続財産を分与することが亡くなった方の意思に合致するであろうとみられる程度に特別の関係があった者であるか、が考慮されます。
また申立人に対する財産分与が相当であるかどうかについては、特別縁故者との縁故関係の厚薄、度合、特別縁故者の年齢、職業や相続財産の種類、数額、状況、所在等一切の事情が考慮されます。
以上のように、特別縁故者と認められ、実際に財産分与がなされるかどうかについては、事案によって異なりますが、今まで分与が認められている例は以下のとおりとなります。
- 30年以上にわたり、事実上の夫婦として内縁関係を結び、生活を共にし、被相続人の死後も葬儀を営んだ内縁の妻
- 長期にわたって同居していた、事実上の養子
- 被相続人と生計を同一にし、親代わりとして一切の世話をし、死後は祭祀を主催した叔父
- 被相続人の老後の相談相手となり、心臓病を患った被相続人の看護を尽くした従妹の子
- 被相続人が生前時折墓参りに訪れ、無縁仏にならないように永代供養料を上納して往生を遂げたい旨を告げていた宗教法人
特別縁故者に対する財産分与申立てについて
特別縁故者に対する財産分与申立ては大まかにいうと、以下の通りとなります。
相続財産管理人の選任申立て |
⇩ 申立書等の審理 |
相続財産管理人の選任公告 |
⇩ 2か月 |
相続債権者捜索の公告 |
⇩ 4か月 |
相続人捜索の公告 |
⇩ 6か月 |
相続人不存在確定 |
⇩ 3か月以内 |
特別縁故者による財産分与請求 |
まずは相続人・相続財産に対する債権者を調査し、相続人がいないこと・相続財産の残額が確定したところで特別縁故者と主張する者からの申立てがあった場合、相続財産管理人から特別縁故者への財産分与を行うことができます。
特別縁故者への財産分与の申立てに必要な書類は以下のとおりです。
- 特別縁故者への財産分与の申立書
- 特別の縁故関係を証する資料
- 郵券・収入印紙
以下では、更に詳しく解説していきます。
①特別縁故者への財産分与の申立書
申立書には、亡くなった方と申立人との特別の縁故関係を記載しなければなりません。
また申立書には、申立人の氏名を記載して所定の箇所に押印をし、収入印紙を貼付します。
②特別の縁故関係を証する資料
特別の縁故関係を示す資料があれば、申立書と一緒に提出します。
具体的には、写真や日記、手紙などを添付します。
また資料とは別途、亡くなった方との特別の縁故関係に関する陳述書を作成して提出するのもよいでしょう。
③郵券・収入印紙
以上の書類の他に、今後の郵送手続き等に必要な郵券・収入印紙を同封します。
申し立てる内容によって金額が違いますので、管轄家庭裁判所のホームページを参考にして指示通りに提出します。(東京家庭裁判所のホームページはこちら)
当事務所へお任せください!
特別縁故者に対する財産分与の申立ては、申立書の作成の他にも、必要書類の収集や時には事情を説明する上申書などを裁判所へ提出する必要がありますので、ご自身で行うよりも専門家に任せた方がスピーディーでより確実に行うことができます。
特別縁故者に対する財産分与の申立て等を含め、裁判手続きについてお悩みの方は、是非当事務所までご相談下さい