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成年後見人選任のための手続きとは
「成年後見人の選任を申し立てたいのだけど、どのような手続きをしたらいいの…?」
このようなお悩みをお持ちではありませんか?
成年後見人を選任するためには、管轄の家庭裁判所に必要書類と併せて申立書一式を提出する必要があります。
申立書の提出から実際に後見人が選任されるまでには、次のような手続きで進んでいきます。
後見開始等申立準備 |
必要書類の収集 申立書等の作成 |
申立書等の提出(提出先:本人の住所地を管轄する家庭裁判所) |
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申立書提出後1~2か月 |
裁判所での申立書類の審査 本人・候補者と調査官との面談 必要があれば鑑定 |
後見開始の審判(審判書の送付) |
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審判後2週間 |
後見人の業務開始 財産等の引継ぎ 初回財産目録・収支予定の作成準備 |
審判後1か月 |
家庭裁判所からの嘱託により、後見登記申請・完了 |
審判後1~2か月 |
家庭裁判所に初回財産目録・収支予定・その他資料の作成 |
そこで以下では、成年後見人選任に必要な手続きと必要な書類について更に詳しく解説していきます。
必要書類の収集・作成
成年後見人選任のために必要な書類は以下の通りとなります。
- 成年後見開始等申立書
- 本人の戸籍謄本・住民票(または戸籍の附票)
- 本人が成年被後見人等の登記がされていないことの証明書
- 本人の診断書(本人の健康状態に関する資料も含みます)
- 本人の財産に関する資料
- 本人の収支に関する資料
- (後見人の候補者がいる場合)後見人候補者の住民票または戸籍の附票
- その他の資料
- 郵券・収入印紙
以下では、更に詳しく解説していきます。
①成年後見開始等申立書
申立人や本人の情報、本人の後見類型・申立ての趣旨・理由・動機などを記載したものを提出します。
申立書には、申立人の氏名を記載して所定の箇所に押印をし、申し立てる内容によって定められた収入印紙を貼付します。
②本人の戸籍謄本・住民票(または戸籍の附票)
本人の本籍や住所を提示するため、本人の戸籍謄本と住民票(または戸籍の附票)を市区町村で取得します。
③本人が成年被後見人等の登記がされていないことの証明書
本人が成年後見制度を利用していないことを証明するため、管轄法務局で本人が成年被後見人等の登記がされていないことの証明書を取得します。
なお、成年後見人選任の手続きにおいて使用するのは、「成年被後見人、被保佐人、被補助人、任意後見契約の本人とする記録がない」項目を選択した書類です。
④本人の診断書
本人の精神状態・健康状態を示すため、家庭裁判所所定の書式の診断書を提出する必要があります。
因みに、この診断書には発行から3か月という期限がありますので、期限内に申立書を提出するよう注意が必要です。
⑤本人の財産に関する資料
本人がどのくらい財産を保有しているのかを示すため、財産に関する資料を提出します。
例えば、預貯金口座を保有していれば預貯金通帳のコピー(通帳の表・裏表紙、申し立てから遡って2・3か月程度)を提出し、不動産を保有していれば、登記事項証明書を提出していきます。
また、プラスの資産だけでなく、借金などのマイナスの財産も保有している場合には、金銭消費貸借契約書のコピーや借用書のコピーなども提出します。
以上のような資料を基に、財産目録を作成して申立書と併せて提出するようにしましょう。
この段階では、手元にある資料で作成できるだけの目録で構いません、後見人選任後に更に詳しい財産目録を作成していきます。
⑥本人の収支に関する資料
本人がどのような収支で暮らしているのかを示すため、収支に関する資料を提出します。
例えば、本人が収益不動産を保有している場合には、家賃の金額が分かるもの(通い帳や通帳のコピー)を提出したり、配当を得られている株式を保有している場合には、株式の取引報告書のコピーを提出したりします。
また、収入だけではなく、税金や家賃など支出がある場合には、固定資産税納税通知書や通い帳・通帳等のコピーを併せて提出します。
以上のような資料を基に、収支予定表を作成して申立書と併せて提出するようにしましょう。
この段階では、手元にある資料で作成できるだけの予定表で構いません、後見人選任後に更に詳しい収支予定を作成していきます。
⑦後見人候補者の住民票または戸籍の附票
成年後見開始申立書の提出の段階から後見人の候補者が決まっている場合には、後見人候補者の住民票や戸籍の附票も提出します。
また、住民票や戸籍の附票だけではなく、候補者の事情説明書を提出して後見人候補者として相応しいかどうかを家庭裁判所に判断してもらいます。
⑧その他の資料
上記の書類以外にも、成年後見開始等申立書では書けないような申立事情説明書を作成して、本人の居住状況や健康状態、どのようなことが日常できて、どのような支援が必要なのかを詳しく説明します。
もし、本人が現に市区町村の社会福祉協議会や権利擁護センターなどの支援を受けている場合には、本人の状況を詳しく把握している担当者に「本人情報シート」を作成してもらえると、申立事情説明書に記載する手間が省けますので、依頼すると良いでしょう。
また、他にも相続財産があれば相続財産目録を提出したり、申立書・申立事情説明書の他に詳しく説明の必要性があれば、家庭裁判所への「上申書」を提出したりしておくと、後見開始の審判をスムーズに進めることができます。
更には申し立ての段階から推定相続人が分かっている場合には、本人が後見制度を利用することについての「親族の同意書」を添付しておくことが望ましいでしょう。
⑨郵券・収入印紙
以上の書類の他に、今後の郵送手続きや登記申請に必要な郵券・収入印紙を同封します。
申し立てる内容によって金額が違いますので、管轄家庭裁判所のホームページを参考にして指示通りに提出します。(東京家庭裁判所のホームページはこちら)
申立書の提出・審理
上記必要書類を収集・作成したら、管轄の家庭裁判所へ申立書類一式を提出します。
家庭裁判所は書類の内容を審査し、必要があれば適宜書類作成者、あるいは本人に内容の確認を行い、本人の判断能力がどの程度あるのか、後見候補者が後見人として適任かどうかを審査します。
審査の過程で直接後見制度に関する理解を図り、内容の確認を行うため、担当調査官との面談を行います。
書類の内容や面談の結果、更なる調査が必要な場合には、診断書の他に「鑑定」を行い、本人にとって最も適正な類型を選択します。
家庭裁判所による審判
家庭裁判所において一通り審理を終えると、審判により後見が開始され、実際に後見人となる方が決まります。
なお、家庭裁判所において後見人候補者以外の方が後見人となる場合や、後見人候補者の他にも複数後見人が選任されることもあります。
審判によって後見人に選任されると、後見人と申立人、本人には審判書が送付されます。
審判の確定
家庭裁判所による審判があった日より2週間が経過すると、後見人として業務を開始することができるようになります。
このときより後見人は、更なる詳細な財産状況の調査や収支予定を作成し、家庭裁判所への初回財産目録・収支予定(通称、「初回報告」)に備えていきます。
後見等開始の登記
後見選任審判が確定すると、家庭裁判所は法務局へ登記の嘱託を行います。
後見登記が完了すると、後見登記事項証明書を発行することができるようになり、その書類をもって本人の代理人として、金融機関や市区町村の役所にて手続きを行うことが出来ます。
しかし後見登記は完了までに通常、2週間から1か月程度の時間がかかりますので、財産調査・収支予定の作成に時間がかかるようであれば、事前に家庭裁判所へ選任審判が確定したことを証明する「確定証明書」の発行を依頼しておくといいでしょう。
家庭裁判所へ初回財産目録・収支予定の作成・提出
後見登記事項証明書や審判確定書などをもって、更なる詳細な財産目録・収支予定を作成して家庭裁判所へ提出します。
家庭裁判所でその内容を精査した結果、不明な点がある場合には、後見人へ更なる説明を求められる場合があります。
当事務所へお任せください!
成年後見人選任の申立ては、申立書の作成の他にも、必要書類の収集や時には事情を説明する上申書などを裁判所へ提出する必要がありますので、ご自身で行うよりも専門家に任せた方がスピーディーでより確実に行うことができます。
成年後見人選任の申立て等を含め、裁判手続きについてお悩みの方は、是非当事務所までご相談下さい!
その他成年後見制度に関するよくある質問については、こちらの記事をご覧ください。