任意後見という制度があります

任意後見制度とは

「認知症になったときのために、今から誰に何を老後任せるかを決めておきたい…」

「一人暮らしなので、老後の生活や死後の手続きが心配…」

「今後の老後生活について、安心して相談できる専門家を探したい…!」

このようなお悩みをお持ちではありませんか?

認知症になった場合を想定して、信頼できる方に自分の望む財産管理等を任せることができる方法として、任意後見制度というものがあります。

任意後見制度とは、本人の判断能力が不十分になる場合を想定して、あらかじめ委任する内容を定めておき、本人の判断能力が不十分になったときに定められた方が本人を支援していく制度をいいます。

任意後見制度は、本人と相手方(任意後見受任者)が公正証書で任意後見契約を締結し、本人の判断能力が衰えてきた段階で任意後見監督人を選任することによって開始されます。

任意後見制度には、契約発効前には本人の判断能力・身体能力がしっかりしているうちは見守りのみを行い、判断能力・身体能力等が低下した後に任意後見契約を発効させる移行型、契約締結後ただちに任意後見監督人を選任し契約発効させる即効型、本人の判断能力・身体能力が低下した後に任意後見人のサポートを受けることのみを契約内容とする将来型に分かれます。

また任意後見制度は法定(成年)後見制度と違い、任意後見受任者との任意後見契約の他に、認知症になる前に見守りや財産管理、死後事務に関する契約を締結することによってご自身の望む支援内容を決めることができる、等のメリットがありますが、その反面、法定(成年)後見制度よりもコストがかかる可能性がある、などのデメリットもあります。

そこで以下では、任意後見制度を利用するメリットとデメリット、その利用方法について解説していきます。

 

任意後見制度を利用するメリット

「任意後見制度を利用すると、どんなメリットがあるの…?」

任意後見制度を利用すると、具体的には次のようなメリットがあります。

 

①本人の判断能力があるうちに支援内容を決めることができる

法定(成年)後見制度は既に認知症の方が利用する制度なので、後見人等が本人のために最も適切な財産管理を代理人として行うことになります。これは本人が既に認知症のため、真に本人が望む財産管理を行っているかどうかが分かりません。

しかし、任意後見制度であれば、ご自身が認知症になる前の判断能力があるうちに対策ができるので、ご本人が望む財産管理を任せることができます。

また法定(成年)後見制度は、候補者を立てて管轄の家庭裁判所に申し立てることができますが、家庭裁判所の審判によっては必ずしもご自身が望む候補者が後見人等として選任されるわけではありません。

その点任意後見制度であれば、将来的に任意後見監督人が就くことになりますが、ご自身が信頼する任意後見人を選任することができます。

ご自身が望む財産管理を信頼できる方に確実にお任せすることができることは、任意後見制度のメリットの一つです。

 

②本人の判断能力があるうちは契約が発効しない

法定(成年)後見制度は管轄家庭裁判所に申し立て、後見人等が選任することによって効力が生じます。現在の制度では、法定(成年)後見制度を一度利用すると、原則途中で辞めることができません。

その点任意後見制度であれば、任意後見契約は任意後見監督人が選任されたときに初めて効力が生じるため、ご自身に判断能力があるうちは現状の生活を維持できますし、任意後見受任者として契約した相手方が信頼できなくなったら、場合によっては判断能力があるうちに任意後見契約を解除することもできます。

ご自身に判断能力があるうちは、契約が発効せず、場合によっては途中で解除することができることも任意後見制度のメリットです。

 

③任意後見監督人を選任して任意後見人を監視させることができる

上記のとおり、任意後見契約の効力が生じるのは、任意後見監督人が選任されたときになりますので、ご本人が認知症になり判断能力が衰えた場合、必ず任意後見監督人が選任されることになります。

任意後見契約を締結したときには信頼できた任意後見受任者だったとしても、ご本人が認知症になり判断能力が衰えた後も、継続して本人が望む後見活動をしてくれるかどうかは分かりません。

その点任意後見制度であれば、任意後見人を監督する任意後見監督人が選任されるので、認知症になり判断能力が衰えた後も、ご自身が安心して生活を送ることができます。

任意後見監督人がしっかりと任意後見人を監視してくれることも任意後見制度を利用するメリットになるでしょう。

 

任意後見制度を利用するデメリット

「任意後見制度を利用すると、デメリットはないの…?」

任意後見制度は大きなメリットがある一方、以下のようなデメリットもあります。

 

①契約等の取消権がない

法定(成年)後見制度では、本人が行ってしまった契約に対して、本人にとって不利益がある場合には、その契約等を取り消すことができます。

その点、任意後見人には取消権がないので、ご本人が不利益のある法律行為を行ったとしても、任意後見人が取り消すことができません。

ご本人に不利益がある場合でもその法律行為を取り消すことができない点は任意後見制度のデメリットです。

 

②任意後見監督人の分報酬が余計に発生する

法定(成年)後見制度は、後見人等が弁護士や司法書士などの専門職の場合には、月額2万円から6万円程度の報酬を支払う必要があります。

その点、任意後見制度の場合、任意後見人に対する報酬の他、任意後見監督人に対しても月額1万円~3万円程度がかかります。

ご自身が望む支援内容や支援してくれる方を選べる一方、法定後見制度よりもコストがかかってしまう点がデメリットの一つです。

 

③任意後見契約の発効時期の判断が難しい

法定(成年)後見制度は、管轄の家庭裁判所に申立書と必要書類等を提出し、成年後見人等が選任されることによって、本人のための財産管理・身上監護が開始されます。

その点任意後見制度は、別途任意後見監督人を選任しなければ効力が発生しません。

任意後見が必要になるタイミングを任意後見受任者が判断し、決定しなければならないため、任意後見契約の発効時期の判断が難しいところがデメリットの一つと言えるでしょう。

以上のようなメリット・デメリットを踏まえて、認知症の方の財産管理のために適切な方法を選択することをオススメします。

 

任意後見制度を利用する方法

任意後見制度を利用するためには、任意後見受任者とともに、公証役場にて公正証書によって任意後見契約を締結する必要があります。

契約締結後、本人が認知症等によって任意後見契約を発効させるべき時期がきたとき、任意後見監督人を選任することによって、任意後見契約が発効します。

任意後見契約締結から任意後見契約発効までには、次のような手続きで進んでいきます。

① 任意後見受任者となってご自身を支援してくれる方を決定する

② 契約内容の決定

③ 公証役場にて任意後見契約の締結・公正証書の作成

④ 公証役場(公証人)から法務局へ登記の嘱託

⑤ ご本人の判断能力の低下(喪失)

⑥ 任意後見監督人選任の申立て

⑦ 任意後見監督人の選任

⑧ 任意後見監督人の業務開始

 

任意後見監督人の選任申立ては、任意後見監督人選任申立書・その他必要書類等を管轄の家庭裁判所に提出する必要がありますので、詳しくは当事務所までお問い合わせください。

 

当事務所へお任せください!

任意後見制度の利用する上で、また後見人が日々財産管理業務を行う上で、注意しなければならないことが沢山あります。

財産管理をずさんに行ってしまうと、後見人の善管注意義務違反に問われ、損害賠償請求を受けたり、場合によっては刑事責任を問われたりするので、後見人自身の身を守るためにも、決して自己判断をせず、少しでも迷ったら司法書士などの専門家に相談することをオススメします。

任意後見制度に関することを含め、認知症対策などの高齢者支援についてお悩みの方は、是非当事務所までご相談下さい!

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