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法定相続証明情報制度とは
現在、相続手続き・遺産整理手続きを簡便にする目的で、相続関係を公的に示す「法定相続情報証明制度」という制度があります。
法定相続証明情報制度とは、管轄法務局に戸籍謄本等を提出することによって、亡くなった方の相続関係を示した「法定相続情報一覧図」に法務局の認証した写しを作成できる制度です。
相続人はこの法定相続情報一覧図を金融機関等へ提出することによって、戸籍謄本等の代わりとすることができますし、金融機関等も毎回戸籍謄本等を全部チェックすることなく、相続関係を把握することができます。
法定相続証明情報制度は、相続手続きを行う相続人にも手続きの担当者にとっても、それぞれの負担を軽減する制度として、現在色々な場面で利用されています。
法定相続とは
法定相続証明情報制度で証明される「法定相続」とは、亡くなった方が遺言書を残さなかった場合に、その方の財産をどのように分けるかを定めた方法をいい、その分配する割合のことを法定相続分といいます。
法定相続分は亡くなった方に、相続財産を受け取ることができる相続人(法定相続人)にどのような方がいるか、によってその割合が定められています。
法定相続人は亡くなった方との関係において決まり、その順位は以下の通りとなります。
相続人 | 順位 |
亡くなった方の配偶者 | 常に相続人 |
亡くなった方の子 ※子が既に亡くなっている場合、孫 |
第1順位 |
亡くなった方の両親 ※両親が既に亡くなっている場合、祖父母 |
第2順位 |
亡くなった方の兄弟姉妹 兄弟姉妹が既に亡くなっている場合、兄弟姉妹の子 |
第3順位 |
上記のように、亡くなった方に配偶者がいた場合には、配偶者と最も順位の高い方が相続人となります。
ですから、仮に亡くなった方に妻がいて子供がおらず、両親もいない場合には、妻と亡くなった方の兄弟姉妹が相続人となります。
また、亡くなった方に配偶者いない場合には、最も順位の高い方のみが相続人となります。
実際にどの方が法定相続人かが決まると、法定相続分が定まりますが、その割合は以下のようになります。
配偶者が1名、子2名いる場合(法定相続分:配偶者1/2・子1/2)
配偶者が1名、子が2名いる場合、配偶者の相続分は1/2、子の相続分はそれぞれ1/4(=1/2×1/2)となります。
配偶者が1名、父親(または母親)が1名いる場合(法定相続分:配偶者2/3・父または母1/3)
配偶者が1名、両親のどちらかがいる場合、配偶者の相続分は2/3、親の相続分は1/3となります。
配偶者が1名、兄弟姉妹が2名いる場合(法定相続分:配偶者3/4・兄弟姉妹1/4)
配偶者が1名、兄弟姉妹が2名いる場合、配偶者の相続分は3/4、兄弟姉妹の相続分はそれぞれ1/8(=1/4×1/2)となります。
なお、亡くなった方に内縁の夫や妻、再婚後の連れ子がいたとしても、それらの方と婚姻関係や養子縁組の関係を築いていない限り法定相続人にはなりませんので、内縁関係にある方や再婚後の連れ子に財産を相続させるためには、別途遺言書を作成する必要があります。(遺言書の作成については、こちらの記事をご覧ください。)
法定相続情報一覧図の利用方法
これまで相続手続き・遺産の整理を行うためには、収集した戸籍謄本を金融機関や年金事務所、法務局等に全て提出する必要がありました。
ですから、提出するたびに何通も戸籍謄本を金融機関等へ持参しなければなりませんし、金融機関等もその戸籍謄本を確認しなければなりませんでした。
しかし、この法定相続情報一覧図を提出すれば、以下の場面で収集した戸籍の代わりとして、提出する相続人もチェックを行う金融機関等も手続きが比較的スムーズになります。
法定相続情報一覧図を利用できる場面は主に次のとおりです。
- 預貯金の相続手続き
- 保険金の請求、保険の名義変更手続
- 有価証券の名義変更手続
- 不動産登記の名義変更手続
法定相続情報一覧図の作成方法
法定相続情報一覧図の作成は、相続人である申出人が、①亡くなった方の本籍地、②亡くなった方の最後の住所地、③申出人の住所地、④亡くなった方が所有していた不動産の所在地のいずれかを管轄する法務局へ、申出書と必要書類を添付して行います。
以下では、法定相続情報一覧図の作成方法について解説していきます。
①戸籍謄本等を収集する
相続手続きを行う上で、相続人の調査や財産の調査をしていく中で、戸籍謄本等は必然的に収集しているはずなので、それらを用いることができます。(相続人の調査・戸籍謄本の収集については、こちらの記事をご覧ください。)
②法定相続情報一覧図・申出書の作成
収集した戸籍謄本等を元に、所定の書式に従って法定相続情報一覧図を作成します。
法定相続情報一覧図については法務局のホームページにフォーマットがありますので、こちらを参考にしてみて下さい。
また申出書には、次の事項を記載して提出します。
・申出人の住所・氏名・連絡先・亡くなった方との続柄
・利用目的
・交付を求める通数
・申し出の年月日
③法定相続情報一覧図作成に必要な書類
法定相続情報一覧図の作成には、申出書の他に以下の書類を併せて提出する必要があります。
・亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本等
・亡くなった方の住民票の除票または戸籍の附票
・相続人全員の戸籍謄本
・申出人の住所・氏名が確認できるもの
・(相続人の住所を一覧図に記載する場合)各相続人の住民票の写し等
・(資格者代理人に依頼する場合)委任状、資格証明書
因みに、法定相続情報一覧図および申出書の作成・提出は、司法書士や行政書士等一定の資格を有する者であれば、相続人の代理人として行うことができます。
「法定相続証明情報制度を利用するメリットがあるのは分かったけど、実際にどうやって作ればいいの…?」
「戸籍謄本の収集だけでなく、法定相続情報一覧図の作成をするのは面倒くさいな…」
「戸籍謄本の収集から法定相続情報一覧図の作成まで一括して専門家に任せたい…!」
という方は、司法書士や行政書士等の専門家に任せてしまうのも一考です。
当事務所へお任せください!
法定相続情報一覧図を作成するには、戸籍の収集や申出書の作成、相続関係図の把握等、作成に至るまでに手間がかかるだけではなく、法律的な知識が必要となります。
そのため、ご自身で行うには少々ハードルが高いかもしれませんので、司法書士や行政書士等の専門家に任せてしまうのも一考です。
法定相続情報一覧図の作成を含め、相続手続きや遺産の整理についてお悩みの方は、是非当事務所までご相談下さい!
その他の相続手続き・遺産承継手続きについては、こちらの記事をご覧ください。